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抗VEGF硝子体内注射|加齢黄斑変性・糖尿病黄斑浮腫の治療を眼科専門医が解説

監修: 眼科ひろば編集部(眼科専門医監修)
公開: 更新: 最終監修:

「眼に注射をする」――そう聞くと、多くの方が驚かれます。けれど、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫の治療として、眼の中に直接お薬を注射する治療 は、いまや眼科の標準的な治療法の一つです。それが 抗VEGF硝子体内注射(こうべぐふしょうしたいないちゅうしゃ) です。

抗VEGF療法は、2000年代後半から広まり、それまで「いずれ失明する病気」と言われていた 滲出型の加齢黄斑変性 を、「治療で進行を抑えられる病気」に変えた革新的な治療です。糖尿病による黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症など、複数の網膜疾患の標準治療として確立されています。

このページでは、患者さんからよくいただく「注射は痛い?」「何回打つの?」「効果はどのくらい続く?」「費用は?」といったご質問にお答えする形で、抗VEGF注射について整理してご説明します。

抗VEGF注射とは

私たちの体内には、VEGF(血管内皮増殖因子) という、新しい血管を作る働きを持つタンパク質があります。本来は傷の治癒などに必要なものですが、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症では、眼の中で異常な血管(新生血管)が作られ、出血やむくみ(浮腫) を起こします。

抗VEGF薬は、この VEGF の働きを抑えることで、異常な新生血管の成長を止め、すでにあるむくみを取る お薬です。眼の中に直接注射することで、効率よく病変に届きます。

主な適応疾患は次のとおりです。

適応疾患状態
滲出型加齢黄斑変性(wet AMD)黄斑下の新生血管
糖尿病黄斑浮腫(DME)糖尿病による黄斑のむくみ
網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫(RVO)静脈の詰まりによる浮腫
病的近視に伴う脈絡膜新生血管強度近視合併症
未熟児網膜症の一部小児領域

中高年で最も多いのは、加齢黄斑変性(滲出型)糖尿病黄斑浮腫 です。

適応:どんな方に行うか

適応となる方

注意が必要な方

判断は眼科医が個別に行います。「OCT検査で滲出性病変が確認できる」が、抗VEGF注射開始の主な目安です。

治療の流れ

1. 術前準備

2. 注射当日

「眼に注射」と聞くと怖いですが、実際は短時間で、痛みもほとんどありません。

3. 注射後

4. 通院スケジュール

段階目安
導入期1か月ごとに3回連続注射
維持期症状を見ながら 1〜3か月ごとに継続
長期個別に判断、数年以上継続するケースも

いつ終わるか」は事前に予測しづらく、症状の安定によります。最近の薬剤(バビースモ等)は 投与間隔を長く取れる ものが増え、患者さんの負担軽減につながっています。

使われる薬

現在、日本で使われている主な抗VEGF薬は次のとおりです。

商品名一般名特徴
アイリーアアフリベルセプト標準的に最も使われている、長期データ豊富
アイリーア 8mg高用量アフリベルセプト通常版より投与間隔を延長可能
ルセンティスラニビズマブ古くからある定番薬
ベオビュブロルシズマブ効果持続が長いとされる(炎症の副作用に注意)
バビースモファリシマブ2022年承認の新薬、二重抗体、長間隔投与可能

どの薬を選ぶか、どのくらいの間隔で打つかは、病状・年齢・他疾患の併存 などを踏まえて、担当医が個別に判断します。新しい薬ほど投与間隔が長い傾向で、患者さんの通院負担が軽減できる場合があります。

費用の目安

保険適用 されます(3割負担の方の場合)。

内訳3割負担での目安
薬剤費(1回あたり)約4〜5万円
注射手技料約5,000円
検査・診察約5,000〜10,000円
1回あたりの合計約5〜6万円

高額療養費制度 の対象になるため、自己負担額には上限があります。所得に応じて、月の自己負担上限が数万円〜十数万円 に収まることが多いです。両眼治療や複数回治療では、必ず高額療養費制度を活用してください。

リスク・副作用

抗VEGF注射は比較的安全性の高い治療ですが、ゼロリスクではありません。

リスク頻度・対処
眼内炎(感染)0.05〜0.1% 程度だが重大。徹底した消毒で予防
眼圧上昇(一時的)注射直後に一時的に上がる、多くは自然回復
網膜剥離極めてまれ
眼内出血軽度のことが多い
アレルギー反応まれ
全身性のリスク(脳梗塞・心筋梗塞)統計的には増加なしとされるが、リスク因子のある方は慎重に

注射直後に 「視界に黒い影が浮かぶ(注射した薬の一時的な散布)」「目に出血のあと」 を見ることがありますが、多くは数日〜数週間で消えます。

メリットとデメリット

メリット進行抑制効果が確立 / 視力改善も期待できる / 保険適用 / 外来で短時間
デメリット注射を継続的に受ける必要 / 完全治癒ではない / 通院負担 / まれに眼内炎

視力を回復させる」より「今ある視力をできるだけ長く保つ」治療と考えていただくのが現実的です。早期に始めれば視力改善も期待できますが、すでに大きく視力が落ちてからの開始では限界があります。

よくある質問

Q. 抗VEGF注射は痛いですか?

A. 強い痛みはほとんどありません。点眼麻酔の上で行うため、注射の感覚は「グッと押される」「軽い違和感」程度です。多くの方が「思ったほどではなかった」と感想を述べられます。

Q. 何回くらい打ち続ければよいですか?

A. 病状次第 で、明確な終わりはありません。導入期(月1回×3回)の後、症状を見ながら1〜3か月ごとに継続することが一般的です。安定すれば間隔を空けられますし、悪化すれば頻度を増やします。長期的に続ける覚悟が必要な治療です。

Q. 注射を途中でやめるとどうなりますか?

A. 多くの場合、再び新生血管が活動し、視力が低下します。「効いているから症状が落ち着いている」のであり、止めると元に戻る可能性が高いです。自己判断で中止せず、必ず担当医と相談してください。

Q. 反対の目も治療が必要ですか?

A. 片眼に滲出型加齢黄斑変性がある方は、もう片眼でも将来発症するリスク が高いです。アムスラーチャートでの定期セルフチェックと、眼科の定期受診が大切です。発症が確認されたら、その目も注射の対象になります。

Q. 注射を続けるのが負担です。新しい薬で間隔を伸ばせる?

A. 可能性があります。バビースモやアイリーア 8mg など、近年の薬は 2〜4か月間隔 での投与が可能なケースもあります。負担を感じている場合は、担当医に「投与間隔を伸ばせる選択肢があるか」を相談してみてください。

Q. 注射後に運転や仕事はできますか?

A. 多くの方は当日中の活動も可能 です。ただし、視界がぼやけることがあるため、注射当日は念のため公共交通機関や送迎での通院をおすすめします。翌日からは通常の活動に戻れる方が多いです。


抗VEGF注射は、かつて「失明する病気」と諦められていた加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫を、「治療できる病気」に変えた革新的な治療 です。続けるのは確かに大変ですが、視力を守る効果は確立されており、続ける価値の大きな治療法です。

定期的な通院と注射の継続が、長く視力を保つ最大のポイントです。担当医と二人三脚で、無理のないスケジュールを組み立てていきましょう。

関連疾患の詳細については、加齢黄斑変性の解説ページ糖尿病網膜症の解説ページ もあわせてご覧ください。