「メガネをかける生活から解放されたい」「コンタクトレンズが手間で…」――そう思って情報を集めたとき、最初に出会う手術が LASIK(レーシック) ではないでしょうか。
LASIK はレーザーで角膜を削って近視や乱視を矯正する手術で、1990年代から行われてきた歴史ある屈折矯正手術です。手術時間は片眼10分程度、ほとんどが日帰りで、視力もすぐに改善するのが大きな特徴です。
ただし、角膜を削るため不可逆的、強度近視や角膜が薄い方には不適応、ドライアイ・ハローなどの後遺症 といった注意点もあります。近年は ICL が同等以上の選択肢として広まってきており、適応を慎重に見極めることが大切です。
このページでは、LASIK の仕組み・適応・費用・リスクと、患者さんからよくいただくご質問にお答えする形で、LASIK について整理してご説明します。
LASIKとは
LASIK は Laser-Assisted in Situ Keratomileusis の略で、レーザーを使った角膜内屈折矯正手術です。
仕組みは次のとおりです。
- 角膜表面に薄いフタ(フラップ)を作る ― マイクロケラトームかフェムトセカンドレーザーで
- フラップをめくる
- エキシマレーザーで角膜の中央を削る ― 削り方で近視・乱視・遠視を矯正
- フラップを元に戻す ― 自然に接着、縫合は不要
削った角膜は元に戻せないため、LASIK は不可逆的な手術 です。
近年は LASIK から派生した次世代の屈折矯正手術もあります。
| 手術名 | 特徴 |
|---|---|
| LASIK | フラップを作り、その下を削る。最もスタンダード |
| PRK | フラップを作らず、角膜表面を直接削る。LASIK 不適応な薄角膜にも対応 |
| SMILE / ReLEx SMILE | 小切開で角膜片を取り出す、より低侵襲な新世代手術 |
| LASEK / Epi-LASIK | フラップではなく上皮層をめくる中間的な術式 |
このページでは、最も普及している標準的な LASIK を中心に解説します。
適応(向く方・向かない方)
向く方
- 18歳以上、近視・乱視・遠視が安定している(過去1〜2年で度数の変化が少ない)
- 角膜の厚みが十分(中心角膜厚 500μm以上が目安)
- 角膜形状に異常がない
- 円錐角膜や他の角膜疾患がない
- ドライアイが軽度
- 全身疾患のコントロールが安定
あまり向かない方
- 強度近視(−10D 以上は一般に難しい)
- 角膜が薄い(中心角膜厚 < 500μm)
- 円錐角膜、円錐角膜疑い、または家族歴
- ドライアイが強い
- 妊娠中・授乳中
- 18歳未満で度数が安定していない
- 自己免疫疾患、糖尿病コントロール不良
- 緑内障の進行、白内障の進行
- 一部のスポーツ選手(接触系競技で角膜フラップが影響する可能性)
中高年の方の場合、40代後半以降は老眼の影響 で「LASIK だけでは満足できない」ケースが増えます。白内障の始まりが見られれば、LASIK よりも 多焦点眼内レンズ を白内障手術と一緒に検討するほうが効率的です。
手術の流れ
1. 術前検査(複数回)
- 視力検査・屈折検査
- 角膜形状解析(トポグラフィー、トモグラフィー)
- 角膜厚測定
- 瞳孔径計測
- 涙液機能検査
- 角膜内皮細胞数
- 眼底検査
特に 角膜形状の精密な評価 が肝で、円錐角膜の兆候を見落とすと術後に深刻な合併症につながります。
2. 手術当日
- 点眼麻酔
- フラップ作成(15〜30秒)
- レーザーによる角膜削り(度数次第、10〜60秒)
- フラップを戻す
- 所要時間 片眼10分程度、日帰り
- 手術中は機械を見つめるだけで、痛みはほぼなし
3. 術後経過
- 翌日から視力はかなり回復、日常生活は可能
- 抗菌・抗炎症点眼を1〜3か月続ける
- 1週間は眼に水が直接入らないように
- 激しい運動・水泳は2〜4週間避ける
- 定期検査(術後1日、1週間、1か月、3か月、半年、1年)
費用の目安
全額自費(自由診療) で、相場は次のとおりです。
| 項目 | 費用イメージ |
|---|---|
| 両眼合計 | 約20〜40万円 |
| 片眼 | 約12〜25万円 |
| ウェーブフロント / フェムトLASIK 等の高機能版 | +5〜15万円 |
ICL と比べると 半額〜3分の1程度 で受けられる、コスト面のメリットがあります。
医療費控除の対象になります。再手術保証期間(数か月〜数年)があるクリニックも多く、契約内容を事前確認しましょう。
リスク・合併症
LASIK は技術が成熟していますが、不可逆的な手術である以上、慎重に判断する必要があります。
| リスク | 頻度・対処 |
|---|---|
| ドライアイの悪化 | 多くの方で術後数か月続くが、徐々に改善 |
| ハロー・グレア | 暗いところで光のにじみ。多くは6か月で軽減 |
| 過矯正・低矯正 | 度数の誤差。追加 LASIK で修正可能 |
| フラップ関連の合併症 | フラップずれ、しわ、感染。早期発見で対処 |
| 円錐角膜化(エクタジア) | 術後に角膜が突出してくる重大な合併症。術前検査の徹底が予防の鍵 |
| 角膜の感染症 | まれだが重大、抗菌点眼で予防 |
| 退行(視力の戻り) | 数年かけて少し近視に戻る方も |
円錐角膜化 が LASIK で最も懸念される合併症です。これを防ぐため、術前の角膜形状の精密な評価が不可欠で、信頼できる施設選びが重要です。
メリットとデメリット
| メリット | 視力回復が早い / 費用が ICL より低い / 確立された手術 / 日帰り |
| デメリット | 不可逆的 / 強度近視・薄角膜に不適応 / ドライアイ悪化 / 円錐角膜化のリスク / 老眼には対応しない |
「コストパフォーマンス」を重視するなら LASIK、「安全性・可逆性・見え方の質」を重視するなら ICL、というのが選び分けの大まかな目安です。
よくある質問
Q. LASIK と ICL、どちらを選ぶべき?
A. 適応次第 です。同じ条件で選べるなら:
- 軽〜中等度近視で角膜が十分厚い → LASIK で十分なことが多い
- 強度近視・薄角膜・ドライアイが強い → ICL が無難
最終的には、複数の医院で検査を受けて意見を聞くことをおすすめします。
Q. 術後にドライアイになりやすいと聞きました。本当ですか?
A. 本当です。フラップを作る際に角膜の知覚神経を一時的に切るため、術後しばらく涙の分泌が減ります。多くの方は 3〜6か月で改善 しますが、もともとドライアイの方は強く出ることがあるので、術前にしっかり相談してください。
Q. LASIK は老眼にも効きますか?
A. 残念ながら通常の LASIK は 老眼そのものには対応しません。「モノビジョン LASIK」(片目を遠用、もう片目を近用に矯正する方法)で対応するクリニックもありますが、慣れが必要です。老眼が強くなってきた中高年の方は、白内障手術での多焦点IOL の方が現実的かもしれません。
Q. LASIK 後にスポーツは制限されますか?
A. 激しい接触スポーツ(ボクシング、格闘技、ラグビーなど)は注意 が必要です。フラップが衝撃でずれるリスクがあります。プロアスリートで LASIK は避ける流れもあり、最近は ICL を選ぶケースが増えています。日常レベルのスポーツ(ジョギング、ジム、ヨガなど)は2〜4週間で再開可能です。
Q. 視力が悪戻りすることはありますか?
A. 少しは戻る可能性があります。特に強度近視の方は、術後5〜10年かけてわずかに近視に戻ることがあります(退行)。多くは追加の屈折矯正(再手術や眼鏡併用)で対応可能です。
Q. 子どもへの遺伝を心配しています。LASIK を受けたことで遺伝の有無に影響しますか?
A. 遺伝に影響しません。LASIK は角膜の物理的な変化のみで、遺伝子には触れません。お子さんが将来近視になるかは、遺伝と環境(屋外活動時間など)が決め手で、LASIK 経験は無関係です。
LASIK は、メガネやコンタクトに頼らない生活を、比較的低コストで実現できる選択肢です。技術も成熟していますが、不可逆的な手術であり、適応の見極めと信頼できる施設選びが何より大切です。
強度近視や薄角膜の方は ICL を、軽〜中等度近視で角膜が十分な方は LASIK を、白内障が始まっている中高年の方は多焦点眼内レンズを ―― そんな選び分けが基本になります。
複数の医院で意見を聞き、自分に最適な選択肢を見極めてください。