「緑内障で視野検査を受けるよう言われた」「視野検査って疲れる検査と聞いたけど…」――視野検査は 緑内障の進行管理に欠かせない検査 で、定期的に受け続けることが視力を守る鍵になります。
このページでは、患者さんからよくいただく「痛い?」「どのくらい時間がかかる?」「結果はどう見るの?」といったご質問にお答えする形で、視野検査について整理してご説明します。
視野検査とは
「視野」とは、目を一点に固定した状態で、まわりがどこまで見えているかの範囲を指します。健常な方の片眼の視野は、上に約60度、下に約75度、内側に約60度、外側に約100度ほど広がっています。
視野検査は、この範囲のどこに「見えない部分」があるかを精密に測定する検査です。痛みは全くなく、機械の中の光が見えたらボタンを押すだけ のシンプルな検査ですが、集中力が必要なため少し疲れます。
種類
視野検査にはいくつかの方法があります。
| 種類 | 特徴 | 主な対象 |
|---|---|---|
| ハンフリー視野計(静的視野検査) | コンピュータが自動でランダムに光を出す。最も標準的 | 緑内障、視神経疾患 |
| ゴールドマン視野計(動的視野検査) | 検査者が手動で光を動かす、視野の周辺部の評価に強い | 全視野の評価、神経疾患 |
| FDT(Frequency Doubling Technology)スクリーニング | 短時間(片眼3〜5分)で緑内障の有無をスクリーニング | 健診、簡易検査 |
| OCTOPUS視野計 | ハンフリーと同様の自動視野計 | 緑内障 |
| マイクロペリメトリー | OCT画像と統合、黄斑部の精密評価 | AMD、黄斑疾患 |
最も多く使われるのは ハンフリー視野計 で、「視野検査」と言われたらほぼこの検査と考えてOKです。
ハンフリー視野計のプログラム
ハンフリー視野計には、検査範囲や精度が異なる複数のプログラムがあります。
| プログラム | 内容 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 30-2 SITA Standard | 中心30度の精密検査、標準的 | 片眼約5〜7分 |
| 24-2 SITA Standard | 中心24度、より短時間 | 片眼約4〜6分 |
| 10-2 SITA Standard | 中心10度を細かく、進行例向き | 片眼約5〜6分 |
| SITA Faster | 高速版、精度はそのまま | 片眼約3〜4分 |
担当医は、患者さんの状態に応じて適切なプログラムを選択します。初診と進行管理では使うプログラムが違う ことも多いです。
どんな疾患の診断・管理に使われるか
視野検査は、以下のような疾患で重要な役割を果たします。
| 疾患 | 視野検査の目的 |
|---|---|
| 緑内障 | 視野欠損の有無・位置・進行のモニタリング(最重要) |
| 加齢黄斑変性 | 中心暗点の評価 |
| 糖尿病網膜症 | 進行例での視野評価 |
| 網膜剥離 | 剥離範囲の確認 |
| 視神経炎・視神経症 | 視神経障害のパターン分析 |
| 脳腫瘍・脳卒中 | 視放線・後頭葉障害による視野異常(両眼性) |
| 網膜色素変性症 | 周辺視野の進行評価 |
特に 緑内障の管理では、視野検査は治療効果と進行を判定する基準 になります。緑内障と診断されたら、通常 半年〜1年ごとに繰り返し受ける ことになります。
検査の流れ
1. 準備
- 普段使っているメガネを持参(コンタクトでもOK)
- 検査前にトイレを済ませる
- リラックスして集中できる状態に
検査前の食事制限はありません。瞳孔を広げる薬は使わないので、検査後にすぐ運転して帰れます。
2. 検査開始
- 検査機の前に座る(顎台に顎を、額をベルトに当てる)
- 片眼に眼帯(検査しない方を遮蔽)
- 遠視・近視のレンズを装着(検査距離に合わせた矯正)
- 中央の固視灯(中央の点)を見続ける
- 光が見えたらボタンを押す
3. 検査中
- 見えた・見えないの判断にあまり迷わず、すばやくボタンを押す
- 「見えたかな?どうかな?」と迷ったら、その光は 見えていない と判断
- 中央の点から目を離さないことが最も重要
- 途中で疲れたら中断・休憩可能(機械にボタンあり)
- 「眠そう」「集中できない」場合は、検査の信頼性が下がるので無理せず申し出てOK
4. 検査後
- 片眼ずつ、合計15〜30分程度で終了
- 結果はその場でプリントアウト or 後日説明
当日中に通常の生活・運転は可能 です。
痛みや不快感
| 項目 | 状態 |
|---|---|
| 痛み | 全くなし(光が見えるだけ、針も注射も無し) |
| 不快感 | 機械の中の小さなドームを見続けるため、姿勢の維持にやや疲れる |
| 目の疲れ | 集中して光を探すので、終わった頃には目と頭が少し疲れる |
| その他 | 顔を機械に押し付けて固定するため、メガネは外す |
「痛くない」のは確かですが、「集中する10〜30分」 という意味では、年齢にかかわらずやや疲れる検査ではあります。
結果の見方
ハンフリー視野計の結果には、いくつかの重要な要素があります。
1. グレースケール表示
視野全体を白黒の濃淡で表示。濃い黒の部分が見えていない領域 を示します。一目で視野欠損の場所が分かるため、患者さんへの説明にもよく使われます。
2. 偏差マップ(Total Deviation / Pattern Deviation)
健常な同年代の平均と比較して、どこがどれだけ感度低下しているかを示します。
3. 重要な指標
| 指標 | 意味 |
|---|---|
| MD(Mean Deviation) | 視野全体の平均的な感度低下、進行の総合指標。0 dB に近いほど正常 |
| PSD(Pattern Standard Deviation) | 局所的な感度低下のばらつき。緑内障で典型的 |
| VFI(Visual Field Index) | 視野の良好度を百分率で表示。100%に近いほど良好 |
| GHT(Glaucoma Hemifield Test) | 上下視野の比較、緑内障判定の補助 |
4. 信頼性指標
| 項目 | 何を見るか |
|---|---|
| 固視不良率 | 中央の点をどれだけ見続けたか |
| 偽陽性率 | 光がない時にボタンを押した頻度 |
| 偽陰性率 | 大きな光を見落とした頻度 |
これらが基準を超えると、「今回の検査の信頼性が低い」と判断され、再検査が必要になることもあります。
進行管理のための受診頻度
| 状況 | 推奨される検査頻度 |
|---|---|
| 緑内障の初期診断時 | 数か月以内に複数回(基準値の把握) |
| 緑内障の安定期 | 半年〜1年ごと |
| 緑内障で進行が懸念される時期 | 3〜6か月ごと |
| 健常者の健診 | 数年に1回(リスクがあれば年1回) |
「安定しているからこそ、検査を続けて確認する」のが緑内障管理の基本です。
検査をスムーズに受けるコツ
- 検査前の睡眠を十分に取る ― 疲れていると集中力が下がる
- 検査前のカフェイン取りすぎを避ける ― 緊張が強いと検査に集中しにくい
- 「迷ったら見えていないと判断」 ― 偽陽性を防ぐ
- 休憩しながらでよい ― 機械の中断ボタンを活用
- 2〜3回目は慣れて結果が良くなることが多い ― 初回が悪くても落ち込まない
「初めての視野検査は、コツを掴んでいないだけで、本当の視野はもっと良いことが多い」とされ、緑内障の診断は初回検査だけでは判定せず、複数回繰り返して判断します。
費用の目安
保険適用 です。3割負担の方の場合:
- 動的視野検査(ゴールドマン):約 800〜1,500円(両眼)
- 静的視野検査(ハンフリー):約 600〜1,200円(両眼)
- 視野検査単独で受けると安価
- 他の検査と組み合わせれば、診察料込みで 2,000〜5,000円程度
メリットとデメリット
| メリット | 痛みなし / 保険適用 / 緑内障進行管理に不可欠 / 客観的データが得られる |
| デメリット | 集中力が必要で疲れる / 初回は結果がやや悪く出やすい / 信頼性指標が悪いと再検査 |
よくある質問
Q. 視野検査は痛いですか?
A. 全く痛くありません。光が見えたらボタンを押すだけの検査です。針も使わず、目に触れることもありません。「集中するので疲れる」「姿勢が辛い」という方はいらっしゃいますが、痛みはゼロです。
Q. なぜこんなに頻繁に視野検査を受ける必要があるのですか?
A. 緑内障の進行は、視野検査でしか客観的に評価できない からです。眼圧が安定していても、視野欠損が進行することがあり、その早期発見が視力を守る鍵になります。「症状がないからこそ、定期検査が必要」とご理解ください。
Q. 検査結果が前回より悪く出ました。緑内障が進んでいる?
A. 1回の検査だけで判断はしません。視野検査は、その日の体調・集中力・疲労度に大きく影響されるため、2〜3回の結果を総合して進行を評価 します。1回悪く出ただけで治療を強化することはまれです。
Q. 検査中に迷ったらどうすればよい?
A. 「迷ったら見えていない」と判断してボタンを押さない のが原則です。見えたかどうか曖昧な場合に押してしまうと、「偽陽性」となり検査の信頼性が下がります。
Q. 視野検査を受けるのに、何かやってはいけないことは?
A. 特にありません。前日のお酒、コーヒー、食事は普通通りで構いません。ただし、疲れていると集中力が下がる ので、十分な睡眠を取って臨むのがおすすめです。
Q. メガネ・コンタクトはつけたまま検査しますか?
A. コンタクトはそのまま、メガネは外して機械内の専用レンズを使う のが一般的です。お持ちのメガネの度数を記録するため、念のため持参してください。
Q. 検査後すぐに運転して帰れますか?
A. 問題ありません。瞳孔を広げる薬を使わないので、まぶしくなることもありません。仕事復帰も同日OK です。
視野検査は、緑内障の進行を見守るための「目の健康診断」 のような位置づけです。痛みはなく、定期的に受け続けることで、視野欠損の進行を確実に捉えられます。
緑内障と診断されている方は、面倒に感じることもあるかもしれませんが、「症状がない時こそ大切な検査」 とご理解いただき、担当医の指示する頻度で受け続けてください。
緑内障そのものについては 緑内障の解説ページ、検査を受けるべきタイミングについては 視野が欠ける症状 もあわせてご覧ください。